腕時計の技術

腕時計の基礎技術

ゼンマイ

機械式時計の動力を担う「ゼンマイ」には、「長時間の駆動」「低いトルク」「安定性」「耐久性」などが求められます。

ゼンマイとは

ゼンマイは鋼等の弾性の高い素材を渦巻状に巻いた機械部品です。巻かれた素材が元の形に戻ろうとする力を機械装置の動力源として利用します。動力ゼンマイはペーター・ヘンライン(ドイツ)が1500年頃発明したと言われており、ヘンラインは後に世界で初めての機械式携帯時計を制作しました。

ヘンラインの活躍したドイツのニュルンベルクは、ドイツ鉄道発祥の地として知られ、また世界で初めて地球儀を制作したマルティン・ベハイムらを排し、ドイツの中でも「手工業の街」としてしられています。ヘンラインの制作した携帯時計「ニュルンベルクの卵」は、かなりの重さ(約5kg)があったようです。またヘンライン以前に、すでに1400年代にはゼンマイが存在していたとも考えられています。

時計とゼンマイ

ゼンマイは幅、厚さ、長さによってトルクや駆動時間が決まります。ゼンマイのトルクが必要以上に大きいと、各部品の摩耗がすすみ、故障の原因になります。また時計を構成する部品は小さく軽いので、必要最低限の力を安定して与えることがゼンマイに必要な条件です。

機械式腕時計を動かすのに必要なエネルギーは約10マイクロワットといわれています。小さなゼンマイによる小さな力であっても腕時計が動作するのには十分なのです。

ゼンマイの性能は時計の精度に大きく影響します。分解掃除の度にゼンマイ交換、香箱交換を実施するメーカーが多いです。

ゼンマイに取り入れられた技術
鋼の採用

鉄よりも固い鋼を使うことで、ゼンマイを薄く、また長くすることが出来ます。

ニバフレックス

合金の1つで、切れにくいゼンマイのための素材として採用されました。

S字ゼンマイ

巻上げられたゼンマイはその中心部ほど強い負荷がかかり、これは安定した動作を妨げる要因のひとつです。これを緩和するためにゼンマイをS字にし、外側と内側の負荷のかかり方を近づける工夫がなされています。

脱進機

不安定なゼンマイの動力を一定にする機構が「脱進機」です。

脱進機で採用された技術
ヒゲゼンマイ

ゼンマイのトルクは始めは強く、終わりには弱くなります。これを解決したのが「ヒゲゼンマイ」です。動力としてのゼンマイは主に香箱に納められいますが、ヒゲゼンマイはテンプに取り付けられ、調速の役目を果たします。

ブレゲヒゲ

ゼンマイの外側を内側の部分より上に上げることで偏心運動を少なくし、精度を高めました。

インバー、エリンバー

合金の一種です。温度による膨張率、弾性率の変化が小さいことから、時計のヒゲゼンマイに用いられます。ニッケル36%+鉄64%の合金が「インバー(不変鋼)」、ニッケル36%+鉄52%+コバルト12%の合金が「エリンバー」です。

耐磁・耐衝撃

精密機械である腕時計を環境の変化から守る仕組みです。

耐磁機能で採用された技術
インナーケース

磁力線を引きつける軟鉄製の裏蓋をムーブメントにかぶせることで、ムーブメントを磁場から遮蔽することができます。

非磁性合金

鋼の代わりに黄銅、青銅、白銅、ベリリウム等の非磁性合金を使用することで磁気を帯びることが無くなります。

耐衝撃機能で採用された技術
インカブロック

衝撃に弱いテンプの軸が折れないように、バネ付きの穴石で天芯を支える仕組みです。類似の機構として「ダイアショック」や「パラショック」が知られています。

自動巻

腕の動きにより腕時計内部に組み込まれた半円形のローターが回転し、ゼンマイを巻き上げるしくみが「自動巻」です。

手巻きからの発展
世界初の自動巻

記録は無いものの、アブラハム・ルイ・ペルレ(スイス)が自動巻の時計を考案したといわれています。しかし運動量の少ない懐中時計ではうまく機能せず、ジョン・ハーウッド(イギリス)が開発した機構を使ってフォルティス社が製造した「ハーウッド」が初めての自動巻腕時計と考えられます。

バブルバックの登場

初期の自動巻は半回転でしたが、より巻き上げ効率の高い全回転の自動巻機構がロレックス社によって開発されました。「パーペチュアル」と呼ばれるこの自動巻機構を備えた腕時計は1931年に発売され、ロレックス社の看板商品となりました。

多様な自動巻機構
マジックレバー方式

回転錘の往復運動を「マジックレバー」と呼ばれる部品を介して一方向の力とし、ゼンマイを巻き上げます。セイコー社が開発した。部品数の少なさと高い巻き上げ効率が評価されています。

ラチェット方式

ペラトン方式ともいいます。ローターと連動したカムが、アーム先端のローラーを押すことによって、アーム先端が歯車を回転させ、主ゼンマイを巻き上げる仕組みです。IWC社のアルバート・ペラトンが開発しました。

ジャガー・ルクルト方式

弓形の溝をおもりが往復することでゼンマイを巻き上げます。回転錘の厚みが反映されないため、薄型のケースデザインが可能です。

エテルナ方式

軸受けにボールベアリングを採用することで巻き上げ効率を高め、同時に回転錘がどの方向に回転してもゼンマイを巻き上げることができます。

切替車方式

ムーブメントの外側に取り付けられた回転錘が動く力を利用してゼンマイを巻き上げます。切替車はいずれの方向の回転も巻き上げられるようにする仕組みです。

誘導車方式

編集中

片方巻上げ方式

編集中

マイクロローター

巻き上げ効率を高めることで回転錘の大きさを小さくしたものです。回転錘の厚みが反映されないため、薄型のケースデザインが可能となります。

ハーウッド方式

回転錘のついたレバーが香箱と連結し、手首の動きと重力によってゼンマイを巻き上げる仕組みです。回転錘は約130度の回転角で動きます。

ロールス方式

ムーブメントが最大3mmほど上下に動き、その力でゼンマイを巻き上げます。

オートリスト方式

ベルトに加わる力を利用してゼンマイを巻き上げます。

外装

腕時計の大切なムーブメントを守ると同時に、そのデザインは腕時計の印象を大きく左右します。

様々なケース素材
ステンレススチール

最も一般的なケース素材です。さびに強く、加工もしやすいのが特徴。表面が酸化膜に覆われています。ある程度ならば研磨で傷を落とすことができます。研磨後は再び酸化皮膜を形成します。略号SS。

金・銀・プラチナ

ステイタス・シンボルの役割も果たすことの多い腕時計は、貴金属をケース素材として採用することも少なくありません。いずれも加工が容易であり、宝飾技術を取り入れることで豪華な装飾を施すことが可能です。反面、ステンレススチールよりは柔らかく、また傷もつきやすい素材です。銀は経年により表面が変化するため、その味を楽しむこともできます。

チタン

軽く、丈夫で、アレルギーを起こしにくい素材です。丈夫な分加工が難しく、熱を加えて溶かしながらプレスする「熱間方式」で加工します。

純チタン
ステンレスの60%程度の比重と2倍の表面硬度、またチタン独特の色合いがが特徴です。
ブライトチタン
チタンの合金で、純チタンの2倍の表面硬度を持ちます。色が純チタンより白く、鏡面仕上げも可能です。
ブライトハードチタン
チタンの合金で、純チタンの3倍の表面硬度を持ちます。色が純チタンより白く、鏡面仕上げも可能です。
チタンめっき
チタンを他の金属へめっきすることもできます。チタンをイオン化し、ガス中でめっきします。
チタン蒸着表面処理
金やプラチナによるチタンへの表面処理です。真空中で処理します。
ノンスクラッチケース

特殊な加工を施すことで傷がつきにくくなった「超硬金属」と言われる素材です。ラドー社などが積極的に採用しています。

ビッカース硬度

腕時計の外装に使われる素材の硬度は下記のような順です。

ビッカース硬度素材
~100 有機ガラスなど
100~200 黄銅、金無垢、プラチナ、純チタン、ファインシルバーなど
150~250 ステンレス、金めっきなど
250~300 パラジウムめっきなど
300 硬質めっきなど
400~500 ハードステンレス、ハードチタンなど
600~700 硬質合金、ハードレックス(強化ガラス)など
800 クロームめっきなど
1,000~1,200 イオンプレーティングなど
1,000~1,500 超硬質合金など
1,200~1,500 サファイアガラスなど
1,200~1,700 セラミックなど
モース硬度

近年では上記の「ビッカース硬度」を使用することが多い。

モース硬度素材説明
1滑石最も柔らかい鉱物。爪で傷を付けることができます。
2石膏、岩塩爪でなんとか傷をつけることができます。
3方解石硬貨でなんとか傷をつけることができます。
4蛍石ナイフで簡単に傷をつけることができます。
5燐灰石ナイフでなんとか傷をつけることができます。窓ガラス程度の硬度。
6正長石ナイフで傷をつけることができず、刃が傷む。
7石英こすりあわせるとガラスや鋼鉄、銅などに傷をつけることができます。
8トパーズこすりあわせると石英に傷をつけることができます。
9コランダムダイヤモンド以外に傷をつけることができます。
10ダイヤモンド地球上の鉱物の中で最も硬い。
宝飾腕時計

初期の腕時計は女性用のブレスレットに付属されたものだったことからもわかるように、腕時計はアクセサリーとしての側面も持ち合わせています。ケースの素材に貴金属を用い、またダイヤモンドやルビーなどの貴石で装飾を施し、時に数億円の価値で販売されるものもあります。時計の技術と宝飾の技術は共通する部分も多く、現代においても優れた時計職人が同時に優れた宝飾職人であることはめずらしくありません。

腕時計の防水機能
防水機能の実現

機械式、クオーツ式問わず、精密機械である腕時計には水は大敵です。初期にはガラス窓を備え、竜頭操作が可能な別のケースに時計を入れることで防水を実現していましたが、かさばるうえに使い勝手もよくありませんでした。

現代と同様の防水機能を備えた腕時計はロレックス社のオイスターケースを使用した腕時計に始まります。オイスター社の開発した「オイスターケース」は実用性が高く、ロレックスの腕時計を博く世界に知らしめるきっかけとなりました。同じ頃、より厳しい条件を満たす必要があった軍用腕時計も防水性能が向上していきます。イタリア海軍の需要に応える形で製作されたパネライ社の防水腕時計は、本格的な潜水が可能なダイバーズウオッチの元祖といわれています。

ねじ込み式の竜頭は十分な防水性能を実現したものの、ネジの摩耗により本来の防水性能が徐々に低下する弱点もありました。これに変わる防水の手段として、「Oリング」が使われるようになりました。竜頭やケースの隙間にゴム製のリングを使用し、適宜Oリングを交換することで、より安価かつ簡便な方法で防水性能を維持することができます。

防水性能の単位

腕時計の防水性能は、「気圧(bar)」もしくは「水深(mもしくはft)」で表します。1気圧防水は10m防水に相当します。これはいずれも静止状態での数字のため、シャワーや水泳など水が動く環境では条件が異なり、注意が必要です。国内では日常生活用防水時計(2~3気圧防水)、日常生活用強化防水時計(5~20気圧防水)、空気潜水時計(100~200m防水)、飽和潜水時計(200~1000m防水)という分類が用いられています。

ダイバーズウオッチの検定基準
  1. ISOのダイバーズウオッチ検定基準
  2. JISのダイバーズウオッチ検定基準

ベルト・ブレスレット

腕時計の装着感や外観の印象を大きく左右するベルトやブレスレットの解説です。

懐中時計から腕時計へ
初期のベルト

腕時計はその原型が「兵士が懐中時計を腕に巻いたもの」と「アクセサリーとしてのブレスレットに小型の懐中時計を提げたもの」です。このことから最初期のベルトは簡易的な布や革を腕に巻き付けたものか、豪華な装飾が施された貴金属のブレスレットであったことが想像されます。

金属製ブレスレットの登場

編集中

エクステンションブレスの流行

編集中

軍事、宇宙用のナイロンベルト

宇宙服は装着者の体を保護するべく、分厚い素材で製作されています。そんな宇宙服の上から巻くことを考慮し、長さを十分に確保でき、軽くて丈夫なナイロンベルトが採用されました。

ダイバーズ用のラバーベルト

ダイバーズウオッチは他の腕時計に比べて水に接する機会が多い腕時計です。水だけならまだしも、海水のように塩分の含まれた水は腕時計本体やブレスレット部分に錆を発生させる可能性がありました。一方で、ダイビングスーツの上から腕時計を付けるには通常の金属ベルトや革ベルトでは長さや伸縮性で問題がありました。これらを解決すべく「錆びに強い」「装着しやすい」条件を満たしたゴム製のベルトが用いられるようになったのは至極当然のことです。

針・文字盤

編集中

文字盤のデザイン
インデックスの種類

編集中

文字盤の表面加工

編集中

夜光の採用

編集中

針の種類
様々な針

編集中

ブルースチール

編集中

デジタルとアナログ

編集中

夜光
自発光塗料

放射性物質のエネルギーで蛍光体を光らせます。ラジウム、トリチウム、プロメチウムなどが用いられます。放射性物質の取り扱いには制限があるために、特に日本ではこれらの自発光塗料を用いることはほとんど無くなりました。またこれらを使用した場合、分解掃除などのメンテナンスも適切な環境の元で国家資格者が行う必要があります。

蓄光塗料

光を蛍光体に蓄えて発光します。自発光塗料に比べ持続時間や明るさに劣るが、近年は十分な光量と持続時間を備えた蓄光塗料も開発されています。

腕時計の発展技術

クオーツ

精度競争を終わらせ、スイス時計業界を震撼させたクオーツ時計の仕組みです。

クオーツの仕組み

水晶は電圧をかけると一定のサイクルで振動します。これを水晶振動子といい、水晶振動子を組み込んだ電気回路を水晶発振器といいます。水晶発振器の信号を15回分周( 周波数を下げること)して1秒間に1回の信号に変換し、この信号をモーターに与えることで、1秒毎の運針を実現しています。

クオーツの特徴

電池を動力とし、機械式時計よりも安価で高性能の時計を製造することができます。またクオーツ以前の機械式時計、電気時計はいずれもスイープ運針であったのに対し、クオーツはステップ運針であることが特徴(例外有)です。これにより消費電力を押さえることができます。

クオーツの消費電力

腕時計本体を動かすのに必要な電力は0.0000009Wといわれる。一億個のクオーツ腕時計を同時に作動させても90Wに過ぎません。

カレンダー

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アラーム

編集中

クロノグラフ

編集中

ミニッツリピーター

編集中

トゥールビヨン

機械式時計の姿勢差を補正する機構の1つです。

トゥールビヨンの仕組み

機械式時計の内、腕時計や懐中時計など、持ち運ぶことを前提に作られた時計では、時計の姿勢の違いにより調速機構であるテンプなどの動きや潤滑油の状態に変化が生じ、精度に影響を与えます。これを解消すべく、脱進調速機構を搭載した「キャリッジ」を常に回転させることで姿勢の偏りを補正したものがトゥールビヨンです。

トゥールビヨンの歴史

トゥールビヨンは1795年にアブラアン・ルイ・ブレゲによって発明(1801年に特許を取得)されたといわれています。1930年にはLIP社が腕時計に初めてトゥールビヨンを搭載し、また1947年にはオメガ社が、翌1948年にはパテック・フィリップ社が相次いで開発しましたが、精度向上にはさほど効果が認められませんでした。1980年代後半以降、機械式時計の再評価の風潮に伴い、「見せる機構」としてトゥールビヨンが復活し、高級時計メーカーがこぞってトゥールビヨンを搭載した腕時計を発表しました。2000年前後からは香港などで量産されるようになり、価格も安くなり普及が進みました。

腕時計の先進技術

AGS&キネティック

AGS(Automatic Generating System)はセイコー社の考案したローター発電クオーツ式腕時計です。日本では「オートクオーツ」の商品名で販売されました。

AGSの開発背景

クオーツ時計の開発によってセイコーは大きな成功を収めましたが、開発当初からクオーツ時計に必須の「電池の交換」「電池の廃棄」という問題を課題としていました。これを解決したのはそれまで培ってきた機械式時計の技術でした。これは電池交換不要の腕時計を生み出すと同時に、クオーツ時計に興味がなかった機械式時計ファンを取り込むことにもつながりました。

AGSの仕組み

自動巻の腕時計同様、腕を動かすと内蔵された回転錘(ローター)が回転します。その回転が輪列機構により約100倍に増速され、AGローター(サマリウムコバルト磁石)に伝わります。AGローターの高速回転によってAGコイルに電流が流れます。発電された電流はキャパシターと呼ばれるコンデンサーに充電されます。キャパシターから平準化された電気エネルギーがクオーツ回路に供給され、時計が動作します。

AGSの技術

AGSには、ゆるやかな腕の動きでも発電し、同時に急激な動きにも壊れない小型発電機を搭載しました。さらに、CMOSICやステッピングモータ、キャパシタなども新たに改良・開発しています。また、13ミクロン径の極細コイルの巻線技術などを確立することにより、低消費電力化が図られています。これにより、1回の充電で75時間駆動させることができました。

名称の変更と自動復帰

後にセイコーは自動巻発電システムの名称を「キネティック(KINETIC)」に統一します。また「オートリレー(AUTO RELAY)」とよばれる自動復帰機能を搭載しました。「オートリレー機能」を備えた腕時計は静止状態が約72時間続くと自動的に省電力機能が働き、全ての針が止まることでエネルギー消費を最小限に抑えます。その間、時刻情報は4年間にもわたり回路内で保存され、ローターの回転を関知すると高速で現在時刻に復帰します。

スプリングドライブ

スプリングドライブはキネティックと同様の発想から作られた、機械式腕時計の仕組みとクオーツ腕時計の仕組みを合わせた新しい時計です。

スプリングドライブの仕組み

一般的な手巻き腕時計のように、竜頭を巻いてゼンマイを巻き上げます。ゼンマイに蓄えられた力は歯車に伝わり、針を動かします。この時、ゼンマイの力をわずかに発電用に使い、「トライシンクロレギュレーター」と呼ばれる調速機構を動作させます。トライシンクロレギュレーターはコイルとIC、水晶振動子から成り、ゼンマイによって行われている運針が水晶振動子の基準に適合するよう磁力でブレーキをかける役割を担っています。

参考リンク

http://www.seiko-watch.co.jp/sd/

エコ・ドライブ

「エコ・ドライブ」はシチズン社が開発した光を電気エネルギーに変換して動く時計の仕組みです。以前は「ソーラーセル」という名称が使われていました。

エコ・ドライブの開発背景

セイコー社がクオーツ時計の本格的な開発をすすめていた1970年代初等、シチズン社はブローバ社の開発した「音叉時計」を軸に据えた開発を進めていました。しかし世の中の流れはクオーツに大きく傾き、シチズン社はセイコーから5年近く遅れて初めてのクオーツ腕時計を発売します。この遅れを取り戻すべく、シチズンは独自に太陽電池を使用した腕時計の開発を進めました。

世界初の太陽電池充電式の腕時計

1976年にシチズン社は世界初の太陽電池充電式の腕時計「クリストロン ソーラーセル」を完成します。これは文字盤に単結晶シリコン太陽電池を8枚配置し、銀電池を二次電池として充電する方式でした。

太陽電池の仕組み

太陽電池はP型半導体(プラスが集まる)とN型半導体(マイナスが集まる)、電極、反射防止膜から構成されます。太陽電池に光があたると、P型半導体はプラスの、N型半導体はマイナスの荷電粒子を引き寄せます。この二つの荷電粒子の流れを電極で受け止め、取り出すことで発電しています。

サーミック

「サーミック」はセイコー社が開発した熱を電気エネルギーに変換して動く時計の仕組みです。体温と外気温の差によって発電します。

ゼーベック効果

金属やシリコンには両端に温度差が生じると電位差が起こるものがあります。これを「ゼーベック効果」といいます。

熱発電の仕組み

腕時計を身につけているとき、体温によって温められる裏蓋側と外気で冷やされる文字盤側との温度差は10度程度あります。常温付近で熱起電力の大きいBiTe合金(ビスマスとテルルの合金)を1,000本直列に配置し、約0.2ボルトの電圧を取り出します。これを1.55ボルトに昇圧し二次電池に蓄電します。

コーアクシャル

機械式時計の弱点である「部品の摩耗」を減らすことにより注油の必要性を無くした脱進機機構です。

コーアクシャルのしくみ

腕時計の調速機構である脱進機では、アンクルのツメ石とガンギ車の歯が衝突を繰り返しています。この部分の摩擦が大きいとエネルギー効率が低下します。これを押さえるために潤滑油を用いると油の揮発や劣化のため分解掃除が必要となります。これを解決するために、ガンギ車を2段重ねにし、歯先にかかる衝撃や摩擦を素材強度内に押さえることが可能となり、理論上潤滑油が不要になりました

電波時計

電波時計は送信所か送られる時刻情報を時計で受信することで時刻表示の自動修正を行います。

電波時計のしくみ
標準時の設定

国内の標準時を司る「情報通信研究機構(東京)」が30万年に1秒の精度を誇るセシウム原子時計を18台使用し、これらが互いに補正し合った時刻を標準時としています。

時刻情報の送信

情報通信研究機構の設定した標準時刻は、はがね山標準電波送信所(福岡・佐賀)とおおたかどや山標準電波送信所(福島県)を通じて全国に発信されます。

時刻情報の受信

電波時計にはコイル状のアンテナが取り付けられており、標準電波を受信します。そのデータをLSIで解析し、チップコンデンサでトリミングすることで時刻を制御します。

電波時計のあゆみ

電波時計は1986年にユングハンス(ドイツ)によって実用化されました。日本ではユングハンスの技術協力のもとマルマンが1992年に置き時計を、1993年には腕時計を発売しました。同1993年にシチズンが開発から生産まで一貫した国内生産の電波腕時計を発表しました。遅れて1995年にはカシオが、2004年にはセイコーが自社開発の電波腕時計を発表しています。

マルチバンド対応

日本(JJY)以外でもドイツ(DCF77)、アメリカ(WWVB)、イギリス(MSE)で電波時計は使用できます。現在発売されている電波時計の多くが各国の標準電波の受信に対応したマルチバンドモデルです。