腕時計の先進技術

AGS&キネティック

AGS(Automatic Generating System)はセイコー社の考案したローター発電クオーツ式腕時計です。日本では「オートクオーツ」の商品名で販売されました。

AGSの開発背景

クオーツ時計の開発によってセイコーは大きな成功を収めましたが、開発当初からクオーツ時計に必須の「電池の交換」「電池の廃棄」という問題を課題としていました。これを解決したのはそれまで培ってきた機械式時計の技術でした。これは電池交換不要の腕時計を生み出すと同時に、クオーツ時計に興味がなかった機械式時計ファンを取り込むことにもつながりました。

AGSの仕組み

自動巻の腕時計同様、腕を動かすと内蔵された回転錘(ローター)が回転します。その回転が輪列機構により約100倍に増速され、AGローター(サマリウムコバルト磁石)に伝わります。AGローターの高速回転によってAGコイルに電流が流れます。発電された電流はキャパシターと呼ばれるコンデンサーに充電されます。キャパシターから平準化された電気エネルギーがクオーツ回路に供給され、時計が動作します。

AGSの技術

AGSには、ゆるやかな腕の動きでも発電し、同時に急激な動きにも壊れない小型発電機を搭載しました。さらに、CMOSICやステッピングモータ、キャパシタなども新たに改良・開発しています。また、13ミクロン径の極細コイルの巻線技術などを確立することにより、低消費電力化が図られています。これにより、1回の充電で75時間駆動させることができました。

名称の変更と自動復帰

後にセイコーは自動巻発電システムの名称を「キネティック(KINETIC)」に統一します。また「オートリレー(AUTO RELAY)」とよばれる自動復帰機能を搭載しました。「オートリレー機能」を備えた腕時計は静止状態が約72時間続くと自動的に省電力機能が働き、全ての針が止まることでエネルギー消費を最小限に抑えます。その間、時刻情報は4年間にもわたり回路内で保存され、ローターの回転を関知すると高速で現在時刻に復帰します。

スプリングドライブ

スプリングドライブはキネティックと同様の発想から作られた、機械式腕時計の仕組みとクオーツ腕時計の仕組みを合わせた新しい時計です。

スプリングドライブの仕組み

一般的な手巻き腕時計のように、竜頭を巻いてゼンマイを巻き上げます。ゼンマイに蓄えられた力は歯車に伝わり、針を動かします。この時、ゼンマイの力をわずかに発電用に使い、「トライシンクロレギュレーター」と呼ばれる調速機構を動作させます。トライシンクロレギュレーターはコイルとIC、水晶振動子から成り、ゼンマイによって行われている運針が水晶振動子の基準に適合するよう磁力でブレーキをかける役割を担っています。

参考リンク

http://www.seiko-watch.co.jp/sd/

エコ・ドライブ

「エコ・ドライブ」はシチズン社が開発した光を電気エネルギーに変換して動く時計の仕組みです。以前は「ソーラーセル」という名称が使われていました。

エコ・ドライブの開発背景

セイコー社がクオーツ時計の本格的な開発をすすめていた1970年代初等、シチズン社はブローバ社の開発した「音叉時計」を軸に据えた開発を進めていました。しかし世の中の流れはクオーツに大きく傾き、シチズン社はセイコーから5年近く遅れて初めてのクオーツ腕時計を発売します。この遅れを取り戻すべく、シチズンは独自に太陽電池を使用した腕時計の開発を進めました。

世界初の太陽電池充電式の腕時計

1976年にシチズン社は世界初の太陽電池充電式の腕時計「クリストロン ソーラーセル」を完成します。これは文字盤に単結晶シリコン太陽電池を8枚配置し、銀電池を二次電池として充電する方式でした。

太陽電池の仕組み

太陽電池はP型半導体(プラスが集まる)とN型半導体(マイナスが集まる)、電極、反射防止膜から構成されます。太陽電池に光があたると、P型半導体はプラスの、N型半導体はマイナスの荷電粒子を引き寄せます。この二つの荷電粒子の流れを電極で受け止め、取り出すことで発電しています。

サーミック

「サーミック」はセイコー社が開発した熱を電気エネルギーに変換して動く時計の仕組みです。体温と外気温の差によって発電します。

ゼーベック効果

金属やシリコンには両端に温度差が生じると電位差が起こるものがあります。これを「ゼーベック効果」といいます。

熱発電の仕組み

腕時計を身につけているとき、体温によって温められる裏蓋側と外気で冷やされる文字盤側との温度差は10度程度あります。常温付近で熱起電力の大きいBiTe合金(ビスマスとテルルの合金)を1,000本直列に配置し、約0.2ボルトの電圧を取り出します。これを1.55ボルトに昇圧し二次電池に蓄電します。

コーアクシャル

機械式時計の弱点である「部品の摩耗」を減らすことにより注油の必要性を無くした脱進機機構です。

コーアクシャルのしくみ

腕時計の調速機構である脱進機では、アンクルのツメ石とガンギ車の歯が衝突を繰り返しています。この部分の摩擦が大きいとエネルギー効率が低下します。これを押さえるために潤滑油を用いると油の揮発や劣化のため分解掃除が必要となります。これを解決するために、ガンギ車を2段重ねにし、歯先にかかる衝撃や摩擦を素材強度内に押さえることが可能となり、理論上潤滑油が不要になりました

電波時計

電波時計は送信所か送られる時刻情報を時計で受信することで時刻表示の自動修正を行います。

電波時計のしくみ

標準時の設定

国内の標準時を司る「情報通信研究機構(東京)」が30万年に1秒の精度を誇るセシウム原子時計を18台使用し、これらが互いに補正し合った時刻を標準時としています。

時刻情報の送信

情報通信研究機構の設定した標準時刻は、はがね山標準電波送信所(福岡・佐賀)とおおたかどや山標準電波送信所(福島県)を通じて全国に発信されます。

時刻情報の受信

電波時計にはコイル状のアンテナが取り付けられており、標準電波を受信します。そのデータをLSIで解析し、チップコンデンサでトリミングすることで時刻を制御します。

電波時計のあゆみ

電波時計は1986年にユングハンス(ドイツ)によって実用化されました。日本ではユングハンスの技術協力のもとマルマンが1992年に置き時計を、1993年には腕時計を発売しました。同1993年にシチズンが開発から生産まで一貫した国内生産の電波腕時計を発表しました。遅れて1995年にはカシオが、2004年にはセイコーが自社開発の電波腕時計を発表しています。

マルチバンド対応

日本(JJY)以外でもドイツ(DCF77)、アメリカ(WWVB)、イギリス(MSE)で電波時計は使用できます。現在発売されている電波時計の多くが各国の標準電波の受信に対応したマルチバンドモデルです。

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